スマートグリッド - 2


カテゴリー:スマートグリッド

米国でスマートグリッド稼動開始

2009年12月10日

このブログの10月5日記事「太陽光発電の普及と送電網の整備」中の引用記事で、2008年2月に米国テキサス州で起こったことを書いた。テキサス州は風力発電が盛んで約7900メガワットを生成するが、その月はほとんど風が吹かず発電量が82%も減少したが他地域から電力のやり繰りが出来ず送電制限を余儀なくされた、とのことだった。このような事象に対応する技術がスマートグリッドだ。

風力や太陽光などの自然エネルギーは不安定で天候の影響をもろに受ける。そのようなときの近隣地域から電力をやり繰りするスマートグリッド技術による変電設備が米国でやっと運転を始めた。時事通信社サイトの12月9日記事”「賢い送電網」が本格始動=再生可能エネルギー取り込みへ-米”によると次のとおりだ。

IT(情報技術)を活用して電力需給を細かく制御する次世代送電システム「スマートグリッド(賢い送電網)」が、米国で本格稼働を始めた。複合企業ゼネラル・エレクトリック(GE)は8日、電力の調整を瞬時に行える変電設備をニューヨーク市近郊で運転開始。風力や太陽光など再生可能エネルギーで発電された電力の増減に柔軟対応できる体制を整えた。今後、このような設備が全米各地で建設される見通しだ。

ニューヨーク州内の風力発電能力は現在127万5000キロワットだが、5~10年後には800万キロワットに拡大する見込みだ。家庭での太陽光発電も急増している。ただ、このような電力は風量や雲の動きで大きく変動するため、他地域と電力をやりとりして供給を安定させる必要がある。GEによると、新たな変電設備の稼働で、近隣の電力網との間で最大30万キロワットもの電力の融通が数秒で行えるようになった。(C)時事通信社

この設備が設置されるのは米国ニューヨーク州。ニューヨーク州は先のテキサス州ほどではないが風力発電が盛んなようで、5~10年後には800万キロワット、つまり8000メガワットに拡大する見通しだそうだ。この規模は、先に書いたテキサス州の風力発電の規模に等しい。米国は日本よりは風力発電に熱心なように見受けられる。

さて、米国の送電網は古く100年前の技術だそうだ。それを新送電網に変えながらこのスマートグリッドを組み込むのだろう。今回運転を開始したスマートグリッドはゼネラル・エレクトリック社の設備。最大30万キロワット、つまり300メガワットの電力を数秒で近隣の電力網と融通し合えるものだ。今後、このような設備が全米に整備されるそうだ。

日本のスマートグリッド事情

2009年11月16日

このブログの10月29日記事「米国のスマートグリッド整備予算」で、米国のスマートグリッド関連予算は単年度で34億ドル(約3100億円)であることを書いた。今日は日本のスマートグリッドの話題だ。毎日新聞サイト11月15日記事「エコナビ2009:スマートグリッド 本格導入へ始動」から一部を引用する。

米政府は、2月に実施を決めた総額7872億ドル(約70兆円)の大型景気対策に、スマートグリッド向け予算130億ドル(約1兆1700億円)を計上。「100年前の技術が使われ、多大なエネルギーとコストの無駄になっている」(オバマ大統領)と老朽化した送電網の整備に投資を振り向ける方針を決め、既に実施段階に入っている。

ただ、米政府がスマートグリッドで狙うのは、単なる送電網の整備だけではない。最新の送電網と発電所に全米の各家庭を結合することで、省エネ、コスト削減はもちろん、新たな産業育成と雇用創出を狙っている。

具体的には、(1)各家庭の家電製品をネットワーク化(2)パソコンなどで自宅の電力需要を分刻みで把握(3)料金の安い時間帯に電力を購入し、自宅の電池に蓄電(4)プラグインハイブリッド車の電池を活用することでエネルギー効率を高める--など、近未来の省エネ家庭の中軸をスマートグリッドが担うことを想定している。(C)毎日新聞

10月29日に引用した時事通信社の記事では、米国のスマートグリッド予算は34億ドルとあったが、全然違うようだ。今日の引用記事によれば、スマートグリッド向け予算は130億ドル(約1兆1700億円)。約4倍だ。なぜこんなに違うのか知りたいところだが、予算のどこまでをスマートグリッド向けとするかでかなり数値が異なるのかもしれない。

予算の額はともかく、米国のスマートグリッドの目指す技術は次のとおりだそうだ。
(1)各家庭の家電製品をネットワーク化
(2)パソコンなどで自宅の電力需要を分刻みで把握
(3)料金の安い時間帯に電力を購入し、自宅の電池に蓄電
(4)プラグインハイブリッド車の電池を活用することでエネルギー効率を高める

ただ、米国は送電網が100年前の技術ということで送電網そのものを新しくすることが求められている。予算のかなりの部分はそちらに使われることを考えると、この(1)~(4)の開発には想像よりは少ない予算額になる可能性がある。

この毎日新聞記事の後半は次のとおり、日本の状況だ。

◇太陽光発電に必須 費用6兆円

日本のスマートグリッドは、太陽光発電の拡大に備えた送配電システムを作る意味が最も大きい。日本では、停電範囲を最小限に抑える仕組みや大規模工場の電力需要などを把握するために既にITが使われており、送電網の老朽化による停電対策が急務の米国とは、事情が異なるためだ。

日本政府は今年4月、太陽光発電を20年に05年比約20倍の2800万キロワット、30年に約40倍の5300万キロワットに拡大する目標を掲げた。実現すれば、国内の原子力発電の設備容量(4800万キロワット)をしのぐ規模になる。

しかし、天候条件で発電量が大きく変わる太陽光発電を大量に電力系統に接続すると、電力需給がうまく調整できず、停電する可能性がある。安定供給には、大型蓄電池を設置して送電量を一定にしたり、各地の太陽光発電設備の出力調整などが必要で、スマートグリッドが必須になる。経済産業省は7月、30年までの対策費用として最大6・7兆円がかかるとの報告をまとめ、「料金負担や公的支援のあり方を検討すべきだ」と指摘した。

日本政府は今夏から、宮古島など沖縄、鹿児島両県の離島10カ所で、太陽光や風力発電を既存の送電網に接続したスマートグリッドを構築し、影響や経済性などを調べる3年間の実証実験を開始。来年には日米共同で、米ニューメキシコ州で太陽光発電や蓄電池、IT家電などを組み合わせた「スマートグリッドハウス」の実験にも取り組む予定だ。首脳会談ではこれらの実験成果を共有することなどに合意した。今後、新技術やシステムの国際標準化で日米が世界をリードできるかどうかが注目される。(C)毎日新聞

日本では、2030年までにスマートグリッド費用として最大6兆7千億円が必要、との経済産業省の試算だ。米国の1兆1700億円は大型景気対策中のスマートグリッド予算なので土俵が違いすぎ、金額の直接の比較は無意味だ。

しかし、送電網が老朽化し再構築が急務の米国と、送電網が既にIT化されている日本では日本が有利だ。またスマートグリッドの目的も米国とは少々異なるようだ。米国は前記4項目が目指す技術だが、日本では、発電量が不安定な太陽光発電に対応するためのスマートグリッド、という側面が大きい。このスマートグリッドがないと、このブログでも何回か書いているとおり、太陽光発電に多くを頼る時代になると天候の急変で太陽光発電の急減が発生し停電を起こしかねない。それに対応する技術が日本におけるスマートグリッドなのだ。政府は2030年に太陽光発電を5300万キロワットまで拡大する政策で、それは原子力発電を超える規模とか。私は米国の目指す4項目の技術よりは、日本のITによる電力制御がメインのスマートグリッド技術のほうが先ずは重要と考えている。この日本におけるスマートグリッド技術には注視して行かなければならない。

米国のスマートグリッド整備予算

2009年10月29日

当ブログの10月5日記事「太陽光発電の普及と送電網の整備」の中で、太陽光発電の普及には送電網の整備が必須であることを書いた。またその記事中の引用記事の中で、米国の話題として
「オバマ大統領の7870億ドルの景気刺激策のうち、送電網の拡大に充てられるのは、今後2年間でわずか60億ドル。国内の送電網を完全に改修するためには、向こう10年にわたり毎年130億ドルが必要だ。予算はその5%にも満たない。」
とあった。今日の話題は米国の送電網整備の予算についてだ。時事通信社サイトの10月28日記事「次世代送電網に3000億円超=エネルギー効率化へ最大規模投資-米大統領」によると、次のとおりだ。

オバマ米大統領は27日、フロリダ州で演説し、次世代送電システム「スマートグリッド(賢い電力網)」整備促進など34億ドル(約3100億円)のエネルギー効率化計画を発表した。総額7870億ドルの景気対策法の一環で、電力網整備への投資では過去最大の規模。大統領は「(送電システムに)100年前の技術が使われていることで、あまりにも多くのエネルギーとコストを無駄にしている」と述べた。

IT(情報技術)を駆使して電力需要を細かく制御し、太陽光発電など再生可能エネルギーの円滑供給を目指すスマートグリッドは、オバマ政権が掲げるグリーンニューディール政策の柱。計画には、冷房やテレビなど家電を無線ネットワークで結ぶなどし、家庭の電力需要を細かく制御する「スマートメーター」の普及促進や、送電システム、電力機器の仕様共通化を盛り込んだ。(C)時事通信社

状況はほとんど変わっていないようだ。10月5日引用記事では、米国送電網整備の予算は2年間で60億ドル。とりあえず年間30億ドル、とする。今日の引用記事では、この予算額は34億ドル、だ。ちょっと増えただけ。

10月5日ブログ記事を読めばわかるとおり、米国の送電網はかなり古く整備が急務だ。フレキシブルな送電ができず、供給の乱れで停電が起こる状況のようだ。太陽光発電の場合は、日中しか発電しないうえ、日中でも天候の影響を受ける。電力供給の多くの割合を太陽光発電に頼るようになると、電力不足地域へ過剰地域からのフレキシブルな送電が必須となる。それが「スマートグリッド(賢い電力網)」だ。前回記事では、そのような送電網整備に"向こう10年にわたり毎年130億ドル"というとてつもない金額が必要だ。が、実際にはその金額には遠く及ばない。米国においては太陽光発電普及の代償として安定供給のため原子力発電がメインとなるような危惧がある。結局はクリーンエネルギーではなくなってしまう恐れが大だ。

太陽光発電の普及と送電網の整備

2009年10月05日

少し古いが8月12日付の産経新聞サイト記事「風力、太陽光発電の促進が、大停電を引き起こす?」から一部を引用する。元記事はブルームバーグで、米国の話題だ。

輸入石油への依存を解消するために、風力や太陽光発電の開発を促進しようとするオバマ米大統領の計画が、見えないリスクを生んでいる。老朽化した送電網に過度な負担がかかり、大停電を引き起こしかねないのだ。

オバマ大統領の7870億ドル(約76兆700億円)の景気刺激策のうち、送電網の拡大に充てられるのは、今後2年間でわずか60億ドル。しかし調査機関エレクトリック・パワー・リサーチ・インスティチュートのリッチ・ローダン氏によると、国内の送電網を完全に改修するためには、向こう10年にわたり毎年130億ドルが必要だ。予算はその5%にも満たない。
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調査会社ブロードポイント・アムテックのアナリスト、ウィル・ガブリエルスキ氏は、送電線の整備なしに代替エネルギーの使用を進めた場合の電力不足のリスクを指摘する。

同氏の懸念はすでに08年にテキサス州で現実化している。同州の風力発電規模は米国一で、630万家庭への供給量にあたる7907メガワットを生産する。しかし08年2月に風がほとんどなかったことが原因で発電量が82%減少し、工場やオフィスへの送電制限を余儀なくされた。電線を増設していなかったため、代替経路で電力を供給することができなかったのだ。

安定した電力を供給できる石炭火力発電と比べて、風力のような代替エネルギーは多くの送電線や補助金が必要となる。もし中北部ノースダコタ州の風力発電所で猛烈な風が吹いているとしても、電力を必要としているのは遠く離れたシカゴなど大都市であり、そこまで届けなければならない。こうした問題は原子力発電や石炭火力発電では起こらない。これらの場合は発電所は、消費地から比較的近い場所に建設されるからだ。

連邦エネルギー規制委員会(FERC)のジョン・ウェリングホフ委員長は、送電網の予算を増やさなければ、遠隔地で生産された再生可能エネルギーを各都市で十分に利用することができないという。7月20日にシアトルで開催された会議で、「再生可能エネルギーをもっとも効率よく発電できる場所から、それを消費する大都市へとエネルギーを届けるために不可欠な送電設備を開発するとの、連邦政府による確約が必要だ」と主張した。
...(C)産経新聞、ブルームバーグ

送電線の整備無しに太陽光発電・風力などの代替エネルギーに頼ると電力不足に陥る、という米国の教訓だ。

風力発電の規模が米国一のテキサス州では、2008年2月に風がほとんど吹かなかったことが原因で、発電量がなんと82%減少し送電制限を余儀なくされた、とのこと。送電線が未整備で代替経路での電力供給ができなかったことが原因だ。そして米国では、送電網の完全改修に必要な金額の5%未満の予算しか付いていない、とのこと。

通常は、電力の大消費地である都市の近くに火力発電所・原子力発電所は設置される。しかし代替エネルギーの場合、風の強い地域は大都市の近くとは限らず、日照の多い地域も大都市の近くとは限らないので、代替エネルギーの充実には送電網の整備が不可欠、ということだ。

日本も、この米国の例を教訓として送電網の整備に努める必要がある。

 
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