全量買取についての議論


全量買取についての議論

2009年11月15日

11月12日付の毎日新聞サイト記事"発電全量買い取り:電事連会長が苦言「負担の議論を」"から一部を引用する。

◇エコ発電、全量買い取りに苦言

電気事業連合会の森詳介会長(関西電力社長)は11日の会見で、経済産業省が家庭で発電したすべての自然エネルギーを全量買い取る制度の議論を始めたことについて、「コスト負担の公平性の観点から議論していくべきだ」と注文をつけた。

森会長は「自然エネルギーによる発電は通常の発電よりコストが高い。(全量買い取りになれば)国民生活全体に大きな影響がある。産業界の負担も大きい」と述べた。

家庭の太陽光発電を巡っては、家庭内で使い切れず余った分を電力会社が現在の2倍の料金で買い取る制度が今月始まった。政府が普及の促進を目指しているためだが、買い取りに伴う費用はすべての利用者の電気料金にそのまま上乗せしている。森会長は、このまま全量買い取りに移行し、営利目的で売電する業者が参入すれば、家庭や企業の負担が増すと指摘。制度設計次第では、発電全体に占める原子力発電の比重が下がり、かえって低炭素社会実現を阻む恐れがあるとの懸念を示した。
...(C)毎日新聞

このブログでも何回か話題にしているとおり、経済産業省は家庭で発電したすべての自然エネルギーを全量買い取る制度の検討を始めた。これは民主党のマニフェストにも書かれていたことなので実現する可能性は高い。この制度には問題がある。それは、その買取の資金をどうするか、ということだ。現在のところは、その資金は電気のユーザーが広く負担することになっている。税金や電力会社の負担は無い、と私は認識している。

今日の引用記事は、電気事業連合会の森会長(関西電力社長)の発言だ。発言の要旨は次のとおり。
(1)自然エネルギーによる発電は通常の発電よりコストが高い。コストの高い電力を全量買い取ることになると、国民生活全体に大きな影響がある。産業界の負担も大きい。
(2)全量買い取りに移行すると営利目的で売電する業者が参入し、家庭や企業の負担が増す。
(3)結果として、発電全体に占める原子力発電の比重が下がり、かえって低炭素社会実現を阻む恐れがある。

一見もっともな意見なのだが、次のように反論する。

まず(2)だが、これは簡単なことで、営利目的で売電する業者を排除すれば良い。たとえば出力10キロワット以上は全量買取はしない、のようにすれば良いだけの話だ。基本的に、自然エネルギーによる電力の全量買取は、家庭またはNPOのみが対象、との方針にすれば良いのだ。

(3)の発言は、電力会社としては原子力発電を推進したいという本音が丸見え。確かに原子力発電は一見、低炭素だ。しかし環境への負荷の極めて高い発電方式であり、事故によりいかに環境を汚染してきたか、枚挙に暇が無い。残念ながらヨーロッパでも低炭素社会を実現するため原子力発電が見直されていることは事実だ。しかしそれは「一時的緊急避難的」、つまり低炭素社会を出来るだけ早く実現するための施策のはずだ。そのような「一時的緊急避難的」であることの担保なしに原子力発電を推進することには強く反対する。

(1)については、このブログで何回か書いているとおり。自然エネルギーによる電力の全量買取のための資金を、全ユーザにのみ負担させるという考えが間違っているのだ。電気使用料金への上乗せでは、それらの電力発生設備を持っていない家庭には負担増でしかない。負担の公平性を保つには、この資金は税金を大半としなければならない。残りは電力会社の負担とすべきだ。電気使用料金への上乗せは、やるにしてもごく一部である必要がある。

政府にとっては、電気使用料金への上乗せだけで全量買取の資金にすることは、税金を全く使わずに低炭素社会を作れる「おいしい」やり方だ。しかしそれは間違っている。

 
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